派遣制度の改正案

以上のような現状を踏まえ、アーキテクチャ要件を実現するためには、現行の派遣法は改正されるべきだと考えます。具体的には、下記のような点についてです:

  1. 情報の会社自らによる公開義務化
  2. ピンハネの法定制限
  3. 労働諸法違反時の厳罰化
  4. 労働者への補償(罰金の半額)
1.情報の会社自らによる公開義務化について

各種情報(単価、労働条件、契約、派遣事業報告書・決算書等公的文書)を、監督官庁、会社(派遣元・先)自らが一般公開することを、法定義務化(厚労省 平20告示37号の拡充+法制化)

派遣会社は、労働局に対して『派遣事業報告書』(以下、報告書)というものを提出することになっております(派遣法第23条)。

で、報告書や決算書、単価などといったものは、派遣労働者の求めがあったら、開示しなければならないことになっております(厚労省 平20告示37号 13.情報の公開)。しかし、このルールは周知されているといえるでしょうか。言えない。また、派遣会社が自らするとも思えない。
だったら、自ら開示するように法制化すべきです。

また、開示された情報が正しいかどうか裏を取るために、派遣先会社・監督官庁にも確認できるようにせねばなりません。なんで派遣事業の一番当事者である労働者が、蚊帳の外なんでしょうか?

2.ピンハネの法定制限について

派遣会社は、事実上、職業紹介(案件の紹介)の機能しか果たしていないです。
つまり、顧客へ提供している付加価値(派遣労働者の単価の源泉)のほぼ100%は、技術者の労働力なのです。派遣会社の主たる業務=営業は、単なるコスト(顧客獲得コスト)です。

ところが、派遣会社においては、上記情報の公開どころか、職安法・労基法・派遣法等最低限の法律さえ遵守されていることが稀なのです。法システムが機能していない。
現行の法制は、このような腐った派遣会社を、市場原理から保護し、その生き残りを助けているといっても過言ではないでしょう。逆に言えば、市場競争のしわ寄せが、技術者に過剰に押し付けられているということです。

競争から逃げるのであれば、諸外国並みのピンハネ率に法定制限すべきでしょう。

3.労働諸法違反時の厳罰化

現行のシステムでは、刑罰(罰金刑)が定められているものの30万、40万。多くても300万などといった額です。
これは抑止力としても機能していません。このような定額かつ小額の絶対値ではなく、売上の数%というような、相対値であるべきでしょう。

4.労働者への補償(罰金の半額)

刑罰が定められているにも拘らず、ほとんど機能していない。
派遣会社への「指導」などという、監督官庁のさじ加減のみで決められるのは、どうなんでしょう?
なんで、一番の当事者である派遣労働者は、蚊帳の外なんでしょうか。

派遣法等の直接的な被害者である労働者が、全然救済されていないことについては、以下が詳しいです:
(志位和夫(日本共産党) ;予算委員会質疑,衆議院; 2008 Feb. 8th)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2353050


罰金刑を規定しているということは、その実現に国(監督官庁)が、保護法益を守る責任を有しているということと、考えられます。で、現状その責任を放棄していると。捨て身の労働者の告発によって、かろうじて法システムが機能する(こともある)というのが、実情なわけです。

このようなことでは、困ります。なぜ、公法を守らせるために、労働者が過剰なコストを払わなければならないのでしょう?罰金刑は、国と労働者で折半するのが公平だし合理的です。


以上のような4点の改正によって、実のある「需給の調整弁」たり得るのではないでしょうか。


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